海ママの付添い日記
海は5月5日から18日までの 2週間、胃の手術(逆流防止と 胃ろう造設)のため、広島市民 病院に入院しました。そのため、 母親の由美は久しぶりに「付添 い生活」を送りました。 ここでは、彼女の日記を公開 します。 |
やっぱり、君は強い子だね!(5/18) 看護婦さんに、胃ろうの管理の仕方を簡単に教えてもらう。胃液ほど強い酸はないので、そんなに 神経質にならなくて良いとのこと。幸い肉芽ができたり、出血したりしていないので、お風呂もそのま ま入ってもも良いとのこと。 「ボタンに変えるのは、1ヶ月後を目安にしていきましょう」と先生。ミキサー食を入れるのなら、通 常の胃瘻ボタンより大きいものを探してみるとのこと。最初は呆れ顔だったが、私があんまりしつこ く言うので、先生も本気で考えてくれた様子。やっぱり、何でも話してみるもんだな〜。 最後の昼食、やまいもとろろ、松風焼き豚。トマト、生ジュースをおいしくいただき、皆さんにお礼を 言って、めでたく退院になる。皆さん本当にお世話になりました。海はこれまで以上のさわやかな表 情をしている。やっぱり、君は強い子だね! −完− |
明日退院できることに(5/17) 今日で術後12日目、心配していたことは全てクリアーし、明日退院できることになった。5月一 杯は我慢しなければならないと覚悟していたので、本当に良かった。今回はいろんな面でいい条 件が整って、海のこれからのQOLがさらにアップするように思う。胃瘻をつけることにより、誰でも 安全に、しかも確実に海に食事を取らせたり、水分を補給できるようになったことは、とてもよいこ とだと思う。 |
体力勝負の大腸がん検診(5/16) 今日は快晴。しかし、昨日からの下剤のせいで、昨夜は海の面倒を見るどころではなかった。10 時から、検査のために胃透視室に行く。看護婦さんが、「下剤はしっかり効きましたか」と聞きなが ら、「こんな状態になるまで検査できませんからね〜」と、写真を見せる。これ以上下剤をかけられ てはたまらないので、「もう大丈夫です」と応える。 検査のための服に着替えるが、パンツはお尻の部分に穴が開いていて、なんとも恥ずかしい。そ の上にガウンを着る。待つこと30分。先に検査うを受けた女性が、「たまりません」といった表情で 出て来られる。名前を胃呼ばれ、注射をし検査台にあがる。看護婦さんが、「お尻から管を入れま す」と、やって来る。もうこの時点で、手に汗握る状態。 昨夜からの下剤のおかげで痔が悪くなり、チューブを入れるだけでいた〜い。管が外れないよう に、お尻のなかのチューブの風船を膨らませる。もうまな板の上に乗った鯉の気分、「ささっとすん でくれ!」しかし、なんか様子がおかしい。検査技師の人が行ったりきたり、しかもしきりに首をかし げながら……。「西原さ〜んすみません。さっきまで動いていた機械が動かないんです。申し訳あり ませんが、管を抜きますから、待合室でお待ちください。」ひどい、ひどすぎる。これで、検査できな いことにでもなったら、昨日からの苦しみはなんだったんだ!!! 幸い、20分程度で機会が調子を取り戻し、再開となったが、こんな辛い検査はもうこりごり。大腸 のひだをしっかり伸ばさなければいけないとかで、空気が入るわ、造影剤は入るわ、おまけに、胃 透視以上に検査台の上を動き回るよう指示が出る。いつか東京の明治大学で見た、世界の拷問 博物館を思い出した。股裂き、つめ剥ぎ、水を口からどんどん入れる、まさに、この検査もそんな感 じ。「大腸がんは早期発見が大切です。年に一度検査を受けましょう」とあるが、こんなもん、体力が ないとできない検査である。 検査室を出る直前に、検査検査してくれたドクターに「この検査するだけで体力消耗しますね。」と 言うと、「高齢者は大変です。私もやったことないんですよね〜」と、ばつ悪そうに言っていた。一回ぐ らい経験しておくべきよね。 病室に帰ると、海はヘアーシャンプーを済ませすました顔をしている。海はとても順調で、18日に はとりあえず「チューブをつけたままで退院」の許可がでる。 |
私は人間ドック、海は胃透視(5/15) 海の回復は順調そのもので、私も少々時間をもてあまし気味。こんなに時間のあることは滅多にな いということで、ここ2年近くがん検診もしていない私は、人間ドックの検査を今日受けることにしてい る。昨日夜から食事もとれず、今日は水分も取れないので、少々元気が出ない。海のことを看護婦さ んにお願いし、8時20分に市民病院3階にある検診センターに行く。 中高年の男女が既にガウンに着替え、待合室で不安そうにしている。私も不安である。まるで、流 れ作業のように、次から次へと検査現場に向かい、こなしていく。辛い検査は、胃透視。検査前に胃 の動きを押さえる筋肉注射をし、発砲作用のある顆粒を飲む。「げっぷしたくなりますけど、我慢して 下さい。」口で言うには簡単だ。飲んだとたん、胃の中にむくむくとガスが発生するのが分かる。我慢 しようと思っても、げっぷが思わず出そうになり、うっとこらえる。 検査台に乗る、今度は300ccはあるバリウムを半分飲む。この時点で、ギブアップしたいとこだが、 逃げるわけには行かない。「は〜い、検査始めます。右向いて、左向いて、頭下げます。」検査台の 上でころころ向きを変えるが、これが結構大変。残りの半分バリウム飲むときには、もうやけくそ状 態。口の中に、バリウム独特の匂いと味が広がる。やっと終わった。隣の部屋で、口をすすぎ、下剤 を3錠飲むよう渡される。口の周りに、おばけのQちゃんのようにバリウムがついており、情けない状 態。続いて子宮ガン検診。無事クリアし、10時半には全ての検査を終了する。外来ドックは保険が きかず41700円なり。 午後から、検診結果を聞きに行く。便潜血が擬陽性とのこと。「もう1度検便をしてからでも良いです よ」と言われたが、大腸がんには恐怖心があるので、「注腸検査受けてみます!」と言ってしまった。 明日検査ができるとのことで、また今日も午後からはスープ程度の食事しかできない。おまけに、また 下剤を飲まなくてはならない。憂鬱である。 14時、海も胃透視の検査で放射線科にストレッチャーで出かける。手術後初めて病室を出るので、 なんだかいい顔をしている。やっぱり外はいいんだよな〜。検査は、手術で縛った噴門部の状態を診 る。造影剤を胃の中に入れ、お腹を押したり、向きを変えたりしてみる。以前は、食道に向かって造影 剤が逆流していたが、今回は大丈夫。 「これなら、大丈夫。安心しましたね。」先生も安心だが、私も一安心。 |
黒瀬養護への看護師派遣を確信(5/14) 今日からミルク200ccを3回と、ミキサー食200ccに増加。お昼になると、「海くん、ごは んですよ〜」と、看護婦さんがお膳を運んでくれる。ちょっと味見をしてみるが、なかなかい いお味です。全粥のペーストは時間がたつと糊状になり、詰まってしまうのでほんの少しだ け入れてあげる。一食が500キロカロリーあるとのこと。海は大体半分ぐらいを目安にして 入れる。今日の献立は全粥ペースト、ささみミンチ煮、マッシュポテト、生ジュース、清汁豆 腐。 今日のお昼、知人の織田さんと県教委に障害児室の木原さんを訪ねる。2月に養護学校 への看護師派遣について、黒瀬養護学校に海の様子を見に来られたが、、それきり看護師 派遣については前進のないままである。5月の末には、看護師派遣について具体的に動き 出す予定であるのに、派遣校については、この期に及んでもまだ「検討中であります」とのこ と。一体何ヶ月、検討すれば決まるんだ。もったいつけるのもいいかげんにしろ!!って感じ。 しかし、今回の県教委突撃で、私としては黒瀬養護にも派遣は必ずあると確信した。なん てたって、市民病院小児科病棟から徒歩2分の場所に県教委はあるのだから、「また来ま 〜す」と、織田さんと元気よく県教委を後にした。 なんだか、今日はとても充実していたわ! |
素晴らしい給食に感激(5/13) 今日のお昼から、ミキサー食注入の指示が出た。胃瘻になっても、何でもミキサーにかけて入れて あげたいとお願いしていたので、先生が試しにやってみようと言ってくれた。 内視鏡がはいった部分の抜糸も終わる。本当に傷が小さく驚いてしまう。海の栄養状態が良いせ いか、ケロイドになることなく目立たない。「これで安心して、水着になれるわ〜」、先生に笑われる。 記念すべき、初めてのミキサー食は、全粥ペースト、カニ煎り卵、里芋煮、煮りんご、生ジュース。 初めてなんで、用心して100ccしか食べられなかったけど、私も味見をしてみてなかなかのもんでし た。これまでいろんな病院に入院したけれど、ここまでの給食を出してくれた病院はありません。な んでも、できうる限り患者の要望を栄養士が聞き、柔軟に対応してくれるのだそうです。 |
順調な回復振りに、余裕も…(5/12) 胃瘻から入るミルクは、順調に消化吸収されている様子で、注入前に注射器で胃の内容物を引いて みるが、多くて30ccくらいで、ほとんど消化されている。熱もなく、もういつもと変わらぬ表情をしている。 術後は、よだれが多かったが、最近めっきりよだれが少なくなった気がする。やっぱり、これまでは胃 液が逆流し、胸焼け状態が常時あったのかも知れない。なんだか、さわやかな表情に見える。こんなん だったら、早く手術してもらえばよかったのかな〜。 こんなことがいえるのも、海の回復が思った以上に順調だからだ。 |
母の日、墾が見舞いにやって来た(5/11) 今日は母の日。珍しく、墾くんが海くんのお見舞いにやって来るとのこと。理乃さんは、今日司法 試験を受けるらしい。彼女の弁護士に対する思い入れ・夢はどうやら本物らしい。一方墾くんは早 勉強に挫折し、「医学部なんてとんでもない」と言い出した。「看護師になろうか、心理療法士も興 味あると」気の多い今日この頃。でも、あんた諦めが早いわね。それだけバスケットばっかじゃ、勉 強できるわけないでしょうに。でも、高校2年生の兄が弟を見舞うなんて、いい話じゃないの。 今日の昼からミルクは200ccに増加。後一息。昼過ぎ、海の所にやってきた墾。パジャマを開き 「俺は、傷をよう見ん」と。アンタ、看護師になるんじゃなかったの?母の日のプレゼントに、マグカ ップ2個。真っ赤なミッキーの絵のついたもの。「お父さんと仲良く使ってください」と。 いいとこあるじゃん、墾君。 |
医療的ケアの問題を再認識(5/10) 今日からエンシュアミルクが1回につき100ccになる。なかなか順調なぺースである。便は 抗生剤が点滴で入っているためか、すこしゆるい感じだけれど、ガスが出ない。しかし、便が でないと心配するよりよっぽど良い。毎日お通じがあるのは、術後としては最高の状態といえ よう。 なんと、今日はヘアーシャンプーをしてもらう。点滴が術後1週間あるから、まだその管が入 っているのでベッド上でしてもらう。入院当日に、お風呂に入ったきりだから、約5日間髪を洗 ってない。最近は2日シャンプーしなくても、髪がべとべとしてかわいそうなので、とてもさわや かになった海が嬉しそうに見た。実際シャンプー後サラサラヘアーになって、カラーリングをし た髪もはえる。「あれ〜、海くん髪そめてるの?」、看護師さんに気付いてもらえて満足げ。 今日はとなりのつっちゃんが退院の日。つっちゃんは2ヶ月近く入院していたらしく、お母さ んは、とてもお家に帰るのを喜んでおられた。お父さんがお迎えに来ると、つっちゃんは大き な口をあけて、飛びっきりの笑顔を見せてくれた。でも、今回の入院でつっちゃんは呼吸を楽 にするため、気管切開をした。そのことで、これまで毎日通っていた養護学校に通えなくなる と、お母さんは悩んでいた。まさに、海がこれまで直面してきた医療的ケアーの問題だ。学校 が大好きなつっちゃんや海が抱える問題を、改めて感じた。そうだ!入院中に何としても、県 教委を訪ねよう!医療的ケアを考える『がんぼうの会』の織田さんが、海くんの入院中に是非 突撃しようと言っていたわ! |
大事件発生?! ヒヤッとした一瞬(5/9) 朝から快晴。日一日と海の状態も回復していくのが分かる。オムツをはずしてビックリ。海のお ちんちんが……尿道に入った管が折れ曲がる程ビッグになっているではないの!「海くん、調子 が戻ってきたね」お腹に耳を当ててみると、きゅるきゅるっとお腹が微かに動き始めた音がした。 午前9時時、手術後初めてのポカリを50cc、胃ろうのチューブから入れてあげる。あっという間 になくなるが、初めてなのであくまでもゆっくりゆっくり、様子を見ながら入れる。これまでは口から チューブを入れていたのに、直接おなかの管から食べ物が入っていくのは、本人にとってはどん な気持ち? 回診にてハルン、マーゲンチューブを抜く。鼻の穴から入っていたチューブが無くなり、すっきり した様子。午後からエンシュアミルク50cc開始。術後排便がないので心配していたが、ポカリを入 れた直後に自然排便あり。お腹が動き始めた証拠、めでたしめでたし。全身麻酔後は、おなかの 動きが悪く、腸閉塞になったりと様々なリスクがあるが、これも海は見事克服……と思ったのも束 の間、事件発生。 この日初めてポカリ注入後に、50ccの湯で溶いた薬を胃瘻から注入したところ、海がうっと力を 入れた。すると、薬が口からだら〜っと出たではないか。えっ!これってどうゆうこと?!吐かない ようにするための手術じゃなかったの???「海くんの場合、噴門部をかなり閉めましたから、吐 きたくても吐けないんですよね」と話してくれた、主治医の河合先生に報告すると、「そんなはずな いんですけどね〜。吐きたくても少々じゃ吐けないんですけどね〜」と、ちょっと困った様子。 次に注入するとき、もう一度よく観察することにする。 幸いそれ以後は、吐く様子はみられない。 何かの間違いだったんだろうか?しかし、ニッセンの噴門形成術は比較的再発しやすい手術らし い。緊張の具合や体の変形など、たくさんの要因が再発の引き金になるらしいのだ。 |
海は絶食、私は焼肉ランチ(5/8) 昨夜から雨がふっている。時折ざ〜っと大きな雨音がする。天気の悪い日の病院は、なんだか気 落ちする。夜間2時間おきの体位交換、きちんと看護師さんがやってくれ、私はかなり眠れるので思 ったほど疲れを感じない。朝9時清拭してもらい気持ちよいのか、海は目がいつものさわやかすっき りモードになっている。 痛みもそれ程ないのか、なんだか今日にも退院できそうな感じ!しかし、「海くんまだおなかの動き 弱いよ〜」と看護師さんに言われ、手術後2日目であることを改めて実感する。そして、おちんちんも まだ元気無し。 回診にて、夜20時に胃のチューブをとめ、嘔気や嘔吐などなければ、明日からポカリやミルクを開 始とのこと。なんだかとても嬉しい。「海くん、お腹に何か入れられるといいね。」順調な回復に嬉しく なった。手術前、心配で仕方なかった私だが、ちょっと安心。外の空気が吸いたくなッて看護師さん に断って外出する。なぜかこんなとき、「スタミナつけよ〜っ」と焼肉ランチを食す。海が絶食中である にもかかわらず、私の行動は鬼母の様でもあるが、これであと1週間は頑張れそうな気になった。 780円で頑張れるってけっこういいじゃん! |
海の元気度を測るバロメータは……(5/7) よだれがとても多い。以前のような粘いよだれではなく、サラサラの唾液。「鼻から入ったチュ ーブの刺激と、噴門をくくったことによる刺激のためだろう」と言われる。おしっこは、尿道に入っ たチューブからきれいなおしっこが出ている。元気のないときや熱が出たとき、海のおちんちん はクニャッとなっているが、本日も然り。これは、海の元気度を測るバロメータであることが判明 した。 日中、比較的穏やかな表情だが、時々痛いのか体の向きを変えたりするとびくっとする。パル オキシメータの値も、97〜98。緊張時は93くらいにまで下がる。気管切開をしているような障 害児は自宅でも夜間このモニターをつける人が多い。でも海は、アラームの音に左右されるの がいやなので、これまでは着けてこなかった。だから実際のところ、こうやって入院でもしない限 りはっきりした数値は分からない。でもこの数値を見てちょっと安心した。 午後から若い看護婦さんが、体を拭きに来てくれる。海の表情が心なしか嬉しそう。その後、 私が海のベッドに無理やり添い寝してみたとき、何と一瞬にしてモニターの値が30に低下。顔 色も変わらず。これは添い寝されたことへの反抗としか思えない。なんてこった! 隣のベッドの Tちゃんのお母さんと大笑い。 午後の回診でお腹がよく動くまでは、絶食の指示あり。当分点滴のみの生活。 |
とんかつ食べながら、手術の成功祈る(5/6) 手術前日の病室はとても蒸し暑く、あまり眠れなかったが、海は夜もぐっすり眠った様子で、 朝は張り切った表情をしている。快晴。なんだか、海の手術成功を感じさせる天気だ。 午前中に手術がひとつあるので、海は12時からの予定である。午前中の時間がナガ〜ク 感じられ、「早くばっさリやってくれ!ッて感じ」なんて、自分が手術するのでもないのに、夫婦 でとんでもないことを言う始末。 11時30分。いよいよ手術室に向かう準備。海はきょとんとしているが、「海くんがんばれ」 と声を掛けられ、モードがきりかわる。今までの余裕の表情から、目が少しつり気味になって いる。緊張しているのだろう。 ストレッチャーに乗って、3階の手術場へ。思わず、「かえってこいよ〜」と小声で手を握る。 知り合いのMちゃんだって、帰って来るはずの意識が戻らなかったんだから、大げさなようだ けど、一応覚悟はしないといけない。「海頑張れよ」。お父さんが、デジカメでパチリ、海の写 真をとった。「家族はここまでしか入れないんで、お部屋で待っていてくださいね。じゃ、行っ てきます。」と看護師さん。時計は、12時ジャストだった。 病室で、あれこれ考えるのもいやだから、昼食をとりにパッセーラに向かう。何故か「とんか つ」が食べたくなる。こんなときに、とんかつは不謹慎か?12年前の事故直後は、うどんも喉 を通らなかったのだから、大きな変化と言うか、進歩と言うか。今回の手術も、先には明るい 状況が待っているという確信が、2人の中にあるからだろう。 連休最後の日とあって、人がわんさか。海の手術とは全く無関係な人が、わいわいがやが や。この瞬間にだって、死に直面した人がたくさんいるはずだし、実際に息を引き取り悲しみ にくれる家族がいるにちがいない。要するに今日、今瞬間にはいろんな人がいるってことだ。 13時半病室に帰る。ベッドには、点滴台、酸素、アンビュバック、モニターなどが用意され ている。昨日から、読み始めた遠藤周作の「深い河」を読む(お父さんは、明日の授業プリン ト作りをする)。偶然入院の準備をしていて見つけた本だったが、なんだか、人間の死につい てや、生きることについて考えさせられた。時計は15時。内視鏡での手術が進んでいるのか な〜。 16時、開腹になる場合は先生からが連絡ある予定だから、お腹開けずにすんだナかな〜。 さすがに18時を過ぎると、なんだか心配になってくる。何か変わったことがあたんじゃないか、 麻酔が戻らないのかとか…。考えることは悪いことばかり。 18時10分。たまらず廊下に出ると執刀医の高田先生が、手術着のままこちらに歩いてくる のが見え、ほっとする。「最後に5センチほどお腹切ったけど、大丈夫よ」こんなときのお医者 様ってかっこいい!「高田先生の手は、どちらかというとごっつい感じなのに、すごく器用なの よ。」これはいろんなお母さんがよく話題にしてました。 19時看護婦さんと、手術室に迎えに行く。カメラを首から下げたお父さんを見て、「前にも盲 腸のOP後、記念写真取ったお父さんがいましたよ。確か、お医者さんだったわね〜」と笑わ れた。手術室から海が出てくる。「まだ麻酔が醒めていないかも知れませんね〜」いえいえ、 しっかりおきてます。「俺はがんばったんだぞ〜〜〜!」充血した目がうったえています。 病室に戻り、、酸素、サチュレーションモニターをつける。痛いのかドキドキが続くのか、ハー トレートは上昇中。看護婦さんが、てきぱきとモニターのチェックをしながら、「海くん、よく頑張 ったね〜」と声を掛けてくれる。足が小刻みに、ぶるぶる震えている。「やっぱり痛いんだ。そ りゃそうよね〜、腹切ったんだもの。」そ〜っと、パジャマをはぐってみる。思ったより傷は小さ い。 最近は傷口にガーゼを”てんこもり”に乗せたりしないんだ。傷が小さいせいもあるが、スマ ートに透明シートが張ってある。とってもビューティフルな傷である。みぞおちから5センチくら いは切ってあるが、あとは4箇所5ミリくらいの、内視鏡を入れるための傷跡があるだけ。でも チューブがニョキッとお腹から出ているのは痛々しい。海の顔をみて安心したお父さん、20時 過ぎに帰宅する。 20時30分。痛みが増してきたのか、目が釣りあがって震えてくる。心拍数も160。看護婦さ んが、痛み止めの座薬を入れてくれる。21時が消灯のため、病室の電気も枕もとだけ。点滴 や抗生剤、おなかの動きや傷の状態を、バイタルサインとともに2時間おきにチェックする。 22時30分。痛みが和らいだのか、海は眠り始める。明け方まで、なぜか1回も起きることな く眠りつづけ、翌朝8時には酸素も止められる。一睡もできないと覚悟を決めてたのに、ちょっ とビックリ。内視鏡での手術は痛みが少ないと聞いたけど、そうなのかな? 気持ちいいのか、いつものきれいな目をしっかり開けて、楽そうな表情をしている。 |
久しぶりの入院は「こどもの日」(5/5) 正午過ぎ、広島市民病院小児外科病棟到着。広島は、連休最後フラワーフェスティバル最 終日とあって、人でにぎわっている。海の入院する、東病棟4階からは、リーガロイヤルホテ ルがよく見える。病室は、2人部屋。既に、手術をした子どもがいる。しかし……、せま〜い。 カーテンもない部屋は、これからの入院付き添い生活の悲惨さ(?)を物語る。せめてもの救 いは、看護学校時代の同級生がいること、ナースステーションの隣であること、主治医のドク ターが旧知の間柄であること。 入院のための手荷物を片付け、一段落したあと、海の逆流の程度や手術の手順、合併症 などについて、執刀医の高田先生より説明を受ける。海は日常生活では、激しい嘔吐もなく 安定していたが、胃透視検査ではかなりの逆流が見られ、手術適応の状態。がばっと、吐く ことが少なかったのは、噴門がまだしっかりしていると考えられる。 手術は、ニッセン噴門形成術を行なう。食道を引っ張り、胃の壁で全周を覆い縛る。 海の 場合、今後のことも考慮し、しっかりくくる。これにより、げっぷが出にくくなったり、お腹が張っ たりという症状がみられることもある。 開腹術の方が、確実かつ短時間で終わるが、術後のイレウスなどの合併症の可能性が高 いため、できるだけ内視鏡を使って噴門形成術(胃の入り口をくくる)を試みる。続いて、胃か ら直接栄養を取れるよう胃ろうを造設する。 3月末、東京での内視鏡検査で発見された気管の狭窄、拍動については、CT検査の結果、 気管孔より4センチくらいのところに狭窄が見られ、体の変形のため気管軟化症があるとの こと。拍動については、手術の際に再度内視鏡で確認することにする。狭窄部分には、カニ ューレがあたらないように麻酔科の先生と検討する。オペ時間については、内視鏡では、約 5時間。開腹になると、プラスアルファ。 先生の説明の後、承諾書に署名捺印し、明日の手術を待つことになる。海は、なんだかい い顔をしている。看護婦さんに声をかけられると、やはり嬉しそうな表情をする。 18時、お父さんは病院から歩いて10分の、メルパルクに宿泊するため病院をでる。明日 からはしばらく外へ出られないので、看護師さんに断って「そごう」あたりをブラブラ。 |
壮行会と手術前最後の入浴(5/4) 今年のゴールデンウイークは初夏のような晴天が続き、まさに行楽日和。でも、入院を決 めたからには、体調を崩さぬよう、近場で海の壮行会計画。広島プリンスホテルで3日に昼 食をし、4日は自宅で入院の準備。「手術直前になって、熱でも出たらそれこそ大変」と、ち ょっと神経質になる。 入院当日の朝、自慢のお腹をきれいにしてあげるため、墾と敬治で入浴させる。しばらく お風呂にもはいれないし、今度お風呂にはいる時にはお腹にチューブが入っているから…。 久々に浴槽につけてあげるが、足がつかえる状態で、今更ながら海の成長には驚く。 「海くん、あんたの運の強さと、たくましさでこの手術ものりこえてね。」やはり、手術にはい かなる時も不安が付きまとう。 |
手術を決心するまで 5年前から、胃食道逆流の症状が続いていた海ですが、13歳6ヶ月で、オペを決めました。 胃食道逆流の症状は重症児には多くみられ、嘔吐、体重減少、呼吸状態の悪化など様々な 症状がみられます。海の場合は、1997年喉頭気管分離手術をした前後から、時折、鼻の穴 からミルクが出たり、コーヒー様の胃液を吐いたりと軽い症状がありましたが、誤嚥の心配は なく体調は良好でした。 しかし、胃から食道に内容物がどのくらい逆流するか調べる、24時間もモニタリング検査で は、数値が年々上昇。時折、やけくそのように唾液をはくことがあり、食道からの出血を示す コーヒー様のものをタオルに吐き出していることが多くなりました。明らかに逆流の症状はあり ましたが、熱を出すこともなく、体重も増えているため、オペの決断をするのに悩みました。 2003年のモニタリング検査では、手術決断の境界線にあり、引き伸ばすことで、良い結果 はないと、思い切って決断しました。 内視鏡でできれば入院期間は約2週間。海の場合側湾などの変形があり、背骨が腹部に 触れる状態のため、開腹手術の可能性もあるとのこと。その場合の4週間も視野に入れ、梅 雨前には自宅に帰りたいということで、5月6日の手術となりました。 |