海くんのボディーチェック

  

 3月26日から27日まで、海は検査のため国立病院

呉医療センターに入院しました。3月末からのハワイ

旅行を控え、日頃から気になっていた点を中心に、海

の体をチェックしてもらうためです。

          胃 か ら の 逆 流 は 

 時々海はコーヒー状のものを嘔吐することがありました。これは胃の内容物が逆

流して来るためで、重度障害児にはよく見られる症状です。これがひどくなると、食道

が胃液の強い酸のためにただれてしまいます。そこまでひどくなくても、逆流が頻繁に

あると、常に「胸焼け」状態になります。海も以前、険しい表情をして、よだれを噴出す

ように流していたことがありますが、それがちょうどこの「胸焼け」状態のときだったの

でしょう。現在の海に、どの程度逆流が起きているのか。これが今回の検査の重要

項目の1つです。これを調べるには、まず食道にペーハーモニターを入れ、24時間

胃液の逆流がないかを見ます。すると、逆流が少々見られるものの、心配するほど

ではないことが分かりました。つぎに胃に造影剤を注入し、レントゲン透視を行いま

した。そのうえで、おなかを上から押したり、頭のほうを低くして、逆流が起きやすい

状態を作っても、逆流が全く起こらないことが分かったのです。この数年間、海の体

にどんな好ましい変化が起こって、逆流が克服できたのでしょうか……?

            胃 の 形 は

 逆流の大きな原因は胃の形にあります。意識障害のある人の胃は入り口の筋肉

が緩み、全体が筒状の形になり、逆流が起こりやすくなってしまうのです。(以前の

海がそうでした)ところが、海の胃をレントゲンで見ると、胃の入り口がキュッと締まり、

逆流が起こりにくい正常な形になっていることが分かったのです。お医者さんも、「ふ

しぎだなぁ」と首を傾げます。

 このような変化をもたらした原因として思い当たることは、海にエレンタールなどの

人工栄養だけでなく、家族のみんなと同じ食事をミキサーで細かく砕き、口腔ネラトン

法(食事のたびにチューブを口から胃に挿入し、注射器で注入する)で食べさせたこ

としか考えられません。お医者さんも、「もしかしたら、そうかもしれない」と言われます。

       血 液 検 査 の 結 果 は

 血色素(ヘモグロビン)濃度は十分で、貧血の心配なし。γGPTやGOTなどの肝機

能についての値も正常で、この点では家族の中で「一番健康」だということが分かりま

した。

           体 の 変 形 は

 2次障害で最もよく見られるのは、背骨が曲がることによって起こる体の変形です。

海の場合、背骨の下半分が前方にせり出し、腹部を押さえると手で触れられるほど

です。「このせり出した背骨で内臓が圧迫されているのでは?」と心配していたのです。

 ところがレントゲンで見てもらうと、内蔵はせり出した背骨を上手く避けるような位置

に移動しており、圧迫による機能低下も全く見られないことが分かったのです。

           全 体 所 見 は

 「不思議やなぁ、信じられんくらい健康だ!」というのが、お医者さんたちの感想でし

た。親馬鹿な私たちは、「積極的に海を外に連れ出し、自然や様々な文化と触れ合い、

多くの善意の人々と交流してきた」−そんな私たちのやり方が医学的にも認められ、

そして、海が「今までどおりでいいんだよ」と言ってくれているように思え、それが何より

嬉しかったのです。

 

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