第4話 突然の搭乗拒否

 1月31日まさかの事態が発生!突然デルタ航空が旅行社を通し、搭乗拒否を告げてき

たのです。航空会社の指示に従い、必要な質問事項にも答え、機材準備など進めていたの

にも関わらず…。その理由を聞くと「安全上の理由から」とのこと。今回は離発着時に指示

通りの座位を取り、安定飛行に入ってからは180度リクライニングのきくビジネスシートなの

で、最高1〜2時間程度の座位が保持できれば何の問題もないとデルタ担当者は言ってい

たのにです。旅行社も、この期に及んでの航空会社の呆れた対応に「こんなことは初めてで

す」と困惑気味。

 これを聞いた私は、涙が出てきました。納得がいきません。アメリカは自己責任の国だか

ら、日本の航空会社に比べて障害者の旅についても理解があると思い込んでいました。以

前2回のハワイ旅行では日本航空を利用しましたが、スカイアシストデスク(体の不自由な人

が旅行する際のサポート機関)と何度もやり取りし、医師の診断書や親の同意書などなど、

山のような書類提出がありウンザリしたのを覚えています。今回デルタ航空が「以前の旅行

経験があるのなら診断書などは必要なし」との回答に、アメリカの航空会社は障害者の交通

権をよく理解してくれていると、ちょっと感心したくらいです。旅行社の責任者も私の涙の訴え

に、デルタから直接拒否理由を連絡するように交渉してくれましが、結局それも拒否。要する

に1〜2時間座位保持可能でも、気流状態や異常事態発生時それ以上の座位保持が無理

であれば、乗せられないということらしい。初めからそんなこと分かっていたはずだし、異常

事態が発生すればどんな人でも通常とは違う状態に置かれるのです。要するに障害をもっ

た人の交通権は保障されていないということです。出来上がったばかりのパスポートを海の

枕もとに置き、士気を高めていたのに…。

 旅行社からは「成田発着の日本航空を利用しては」との提案がありました。日本旅行であ

れば以前も旅行経験があり、座位は離発着時のみで対応可能との回答を旅行社責任者の

方が取り付けてくれたのです。でも成田までが遠すぎる。第一、余りのひどい対応に一気に

ハワイ旅行への意欲が低下。ハワイが逃げるわけではないし、神様のご計画と今回の旅行

は断念することになりました。海くんもっと素敵なハワイ旅行がいつかできるからね。

 12年前にハワイ島でお世話になったすばる天文台研究員の林左絵子さんは、オアフまで

会いに来てくれる約束をしていたのですが、彼女から早々メールが来ました。「ハワイ島では

まさに今日、デング熱が出ました。海くん、今回はやめといた方がいいということね。元気で

再会できる日を待ってるよ!」アフリカでのジカ熱、ハワイにデング熱…。これで憑き物が落

ちたように、今回のハワイ熱は私の中で解熱していきました。

 身体障害者、高齢者、酸素利用者、ベビーカーを使う赤ちゃん、パニック障害をもつ人…。

様々な障害を持つ人が公共の交通機関を使い、必要な場所へ安心快適に移動する、また

旅をする等の交通権はまだまだだな〜。低床バスや、車椅子やベビーカーの固定ブースも

年々増え、新幹線や在来線の移動などもこの10年でずいぶんスムースになってきたように

感じます。しかし、混雑時間帯の公共のバス利用では、車椅子のまま乗り込むには大変な

勇気が必要です。何より1分1秒を気にする周囲の目がトテモ厳しい。実際息子の日々の移

動は、リフト付きの自家用車かタクシーを使い、公共のバスや電車の利用はほとんどありま

せん。住んでいる所に公共の交通機関が少ないのも1つの理由ですが、積極的に利用して

いないために、大きな問題として考えていないという事実もあります。自分の行きたいところ

へ、いつでも、どこでも。福祉車両を購入し移動や旅行を楽しむこともひとつの方法ですが、

混雑時の公共交通機関を積極的に使うことで、誰にでも必要な交通権を確立することが大

切だと実感しました。皆さん、バスや電車乗れてますか?オアフの市バスがいくらバリアフリ

ーでも、現地までいけなくては何の意味もないですよね。

 以上ハワイ旅行準備から学んだ出来事でした。

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